さわやかな秋日和が続いている。一年で一番からっとした過ごしやすい時期でもある。映画「百花」を観た。菅田将暉と原田美枝子が親子役で主演。原作を書いた川村元気がみずからメガホンをとった。認知症になる母・百合子。息子・泉は結婚していてその妻は妊娠中だ。百合子はかつて少年期の泉を置いて家を出ていた時期がある(父親はすでにいない設定)。認知症の描き方がいい。過剰にならずそれでいて具体性がある。監督の母親がそうだったというからそれが反映しているんだろう(原田の母親もまた認知症を患っていた)。本人の悩みや葛藤は吐露されない。「半分の花火を観たい」としきりに言うがこれは最後まで何のことかわからない。母は失態を繰り返し、施設暮らしとなる。が、映画は子どもから行方をくらました日々、その時出会った男性との日々をも追う。一人の女性の生きざまを浮き彫りにする一方、子供への負い目の深さもうかがわせる。百合子と泉の親子関係がよく描けている。息子は、自分が少年時代の出来事を忘れられないと母をなじるが、母もさまざま忘れていく中で忘れていないことがあった・・。実年齢と40代の両方を一人で演じる原田が艶のある演技を見せている。撮影は1カット1ショットというが、ほとんどそれを感じさせない。少年期の母子の回想が断片的に短く挿入されているのが効果的。阪神大震災の映像など随所にトリッキーな画面が出てくる。川村監督はスペインの映画祭で監督賞を受賞した。うなずかれる結果と思った。