先週末に今西泰彦氏のピアノリサイタルに出かけた(音楽工房ホール)。浜松で継続的にリサイタルをされていることは知っていたが聴いたのは初めて。ベートーベンやショパンのシリーズがあったと思うが、その次がドビュッシーということで、その3回目。和装で開演前からお客さんと談笑したりして、サービス精神旺盛な方とお見受けした。弾く前の解説はパンフ片手に予備校の講師みたいな感じで話す。なかなか無いパターンである。ドビュッシーは純粋に芸術的なものを追求した作曲家と紹介されていた。前半は「映像」第1集、練習曲から3曲、ピアノのために~3曲、難易度が高い曲もままある由、羽織を脱いで白装束みたいな恰好で前半は弾かれた。中に「負傷者の服のための小品」という1分くらいの曲があり、通常の演奏会では取り上げられなそうなモノも入れているということだった。ドビュッシーの響きに忠実な演奏。「負傷者・・」を聴き、私は坂本龍一さんの音楽を思い起こした。和音というか響きがとてもよく似ている。彼がドビュッシー好きだったことがよくわかる。後半は前奏曲集第1集、今西さんはこの曲集を海外でいっぱい聴いたが、よかったことがほとんどなかったという。だからか、気合が入っていた。パンフも別に作り、曲ごとに関連文学の紹介を入れ、コメントを加えている。口頭でも紹介されて、興味を抱かせる導入だった。「デルフィの舞姫」「雪の上の足跡」「西風が見たもの」「亜麻色の髪の乙女」などが入っている曲集だが、今西さんの推しは「沈める寺」。これはドビュッシーの最高傑作とも言われていた。海に沈んだ伝説の寺(カテドラル)がモチーフにあるらしい。そう思って聴くとただならぬ威厳とファンタジーがわきあがってくる。アンコールはどうしても今日はこの曲を弾きたいということで、リストの『巡礼の年』から「オーバーマンの谷」。技術を超えて思いのあふれる演奏だった。拍手。