映画「風よ、あらしよ」

映画「風よ、あらしよ」
 「風よ、あらしよ」は村山由佳の同名小説を映画化したもの(演出、柳川強)。主人公は無政府主義者・大杉栄のパートナーとなった伊藤野枝。明治末期、九州に生まれた野枝は東京の学校に通い、その先進的な考えと感性で人間と社会について鋭い分析を行った。特に虐げられていた女性の在り方生き方について追究し、女性解放を自ら実践した人物であった。現代ならごく普通の主張といえるが、当時女性の地位について、あれだけ声を上げ男に対等にものを言える女性は皆無であったろう。野枝は影響を受けた平塚らいてうの青踏社に依るが、それさえも野枝の先鋭さには及ばなかいように見えた。そして大杉栄と同志としての絆を深めていく。さらに同志からパートナーへ。子どもも生まれ、人生これから活動もこれからという時に、1923年9月、震災後の混乱の中、大杉栄とともにあらぬ嫌疑をかけられ、憲兵らに虐殺される。朝鮮人虐殺と同じ理由で消されたのである。何という理不尽。社会全体の蒙昧を思わざるを得ない。この伊藤野枝を演じたのが、吉高由里子、うまくはまっていた。実際の人物はもっとエキセントリックなイメージがあるが、吉高が演じたことで感情移入しやすくなった。「花子とアン」の時も感じたが、明治大正の近代に生きた女性のイメージに合う。和風な顔立ち、でも地味ではなく少しお茶目な雰囲気もある、表情もいいし、何より長台詞への感情の乗せ方がうまい。「光る君へ」でもそのへんが随所にみられる。この人が主役をやるから見てみたい、と思わせる役者のひとりである。なお、相手役の大杉栄を演じたのは永山瑛太。「福田村事件」でも震災後虐殺される側(行商人)を演じていた。よほど縁があるのだろう。演技も光っていた。


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