高畑勲展(静岡市美術館)

 先月、静岡で高畑勲展をやっていて、これは見逃してはなるまいと思い行ってきた。高畑さんの仕事を隅から隅まで見渡す大規模な展覧会だった。アニメーションの監督にとどまらず、その思想や取り組みまでを視野にいれたもので氏の全貌をつかまんとする内容だった。「太陽の王子ホルス・・」「パンダコパンダ」「セロ弾きのゴーシュ」そしてテレビアニメ(ハイジ、母をたずねて、赤毛のアン等)の演出を手掛けた時期を1期とすれば、ジブリ立ち上げ~「火垂るの墓」「思い出ぽろぽろ」「平成狸合戦・・」あたりが2期となろうか。そして画期的な作品「かぐや姫の物語」に至るまでが3期と見ていいだろう。高畑監督の初期の制作はスタッフが共有できる工夫をするとかアイデアやイメージを可視化するとか、演出家として肝要なことをしたことがあわかる。これは宮崎さんとはちがって絵を描けなかったことが大きかったように思う。ゆえにチーム作りに重点を置いたと思われる。ハイジの時に「レイアウト」の仕事を宮崎さんにあて、これがうまくいったとあった。作品は日常生活を丁寧に描く、しかも退屈させない、それがポイントで、ハイジ、マルコ、アン等、TVシリーズはそれによって成功していた(10代前半、私は日本アニメーションのこれらの作品が好きで欠かさなかった)。ジブリが出来てからあとはより多くの人に知られるようになった。「火垂るの墓」はその頃の金字塔といってよいだろう。宮崎さんがオリジナルのファンタジーに突き進んだのと対照的に高畑さんは日本の持つ文化や自然の特長を生かすものを模索した。同時に海外アニメなどとの接点も大事にした。絵巻物「鳥獣戯画」の研究も知られるところである。が、何と言っても、後期の線描を生かした作品、「となりの山田君」そして「かぐや姫の物語」これをアニメーション映画として成立させたことが大きい。この画面の省略と手書きの線を生のまま使うようなやり方は目からウロコというか、驚きであった。高畑監督の行き着いた先、誰か継ぐ人がいて欲しいものである。
(実は大部の図録等まだしっかり読んでなく、読後、再度言及する時もあろうかと思う。あしからず)


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