NODA・MAP公演「足跡姫」

NODA・MAP公演「足跡姫」
 今月はいろいろなことの区切りが重なって実に感慨深い月となった。夜の仕事が終わり(塾)、子どもの卒園があった。イレギュラーなものでは車の一件がある(前々回書きました)。人間ドックを初めて受け、追加でCT検査も受けたりした(異常なしでした)。などなど挙げてくとキリが無い感じだが、あとに回してるうちにどんどん書くタイミングがなくなってしまったNODA・MAP観劇のこと、しめとして記しておきたい。
 初旬に東京に行った折に観た。「足跡姫」~時代錯誤冬幽霊~である。今は亡き盟友、中村勘三郎への追悼の意が込められている。DMに野田さんが珍しく直筆で長々文章を寄せていた。気持ちがいつも以上に入ってる証拠だろう。評判通り(いつも通り)心に残る舞台だった(全2幕途中休憩ありの長編!)。女カブキ一座の踊り子(姉)とその弟サルワカの物語だ。姉は「三、四代目出雲阿国(おくに)」で、母から踊りを継いでいる。弟とともにカブキをお城(江戸城)でお披露目できることを夢見ている(母の遺志でもある)。弟はそのための筋(台本)を書く。それが「足跡姫」の話なのだが、姿が見えず足跡だけが残る足跡姫が姉に憑依するところから話が大きく動く。姫は地球の裏側(一番遠いところ)「いずこのお国」(言葉遊びうますぎる!)の出で、少数者(たたらを踏み刀を作る者ら)を葬った将軍家(権力者)に復讐を企てるという役どころでもある(二役を宮沢りえが熱演)。このカブキ一座の命運と由比正雪の将軍家への反乱の話を巧みに交錯させ、対権力のドラマを仕立てるという趣向だ。由比正雪を「売れない幽霊小説家」として登場させる(「う」と「れ」を取ると由比正雪か、になる)あたり野田さんの真骨頂、古田新太がその役をユーモアたっぷりに演じていて実に愉快だった。終盤がやや性急な感じで消化するのに時間がかかったけれど、野田戯曲にしてはかなりウエルメイドな感じで珍しい作りだった(劇中劇はあるけど時空がほとんど飛ばない)。ラストは姉弟を城の舞台に立たせ(舞台が一番遠いところだったのだ)、亡くならんとする姉に、弟は自分がカブキを継ぎ猿若勘三郎を名乗りそれを代々続かせようと誓う。実際に勘三郎さんを送った時の思いがあふれていよう(肉体が少しずつ消えて行き発音も母音だけになっていく姉・阿国に重ねられる)、それが如実にわかる幕切れだった。演出としては、盆を回す場転を用いたり、囃子方を入れる等、歌舞伎の要素をおおいに取り入れていた。終幕は、桜の満開の下、「カバレリア・ルスティカーナ」間奏曲が流された。「研辰の討たれ」のラストでも使われた曲である。勘三郎さんへの最大のオマージュであった。喝采。


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