日曜にムナポケの公演を観た。作家の個性が如実に表現されていて刺激に満ちた舞台だった。ワイルドの「幸福な王子」を借りた自己犠牲のストーリー。「王子」(現実には校長先生らしい)は国に生きることに苦しむ弱者層(病者、障害者、高齢者、経済的弱者など)を身をささげて救おうとする(ME-shismという表現が巧み)が、この「弱者層」を最初「お化け」として比喩的に表現した、弱者が満つる世は「お化け屋敷」というわけだ。この運びはなかなか勇気が要る部分と思うが、やりきったところに独自の戯画精神が垣間見えた。前半だけだとお化けネタ披露みたいな感じだが、後半、弱者らの言葉の真の意味が明かされる。なるほどそうかと思わされる。「お化け」を演ずる役者たちの熱演も光った。「お化け屋敷」の成立はこのあたりの演技演出にかかっている。この「王子」の一連の犠牲行為をユーチューブで流しているのが「つばめ」である。ワイルド作品の「つばめ」と違い、「王子」を道具化し相対化する。これは現代人を揶揄しているのだろうか。終盤「王子」を訴える側に変じるのだが、ちょっと役どころがわかりにくかった。最後「王子」が殺そうとする母親との関係ももう少し書き込めるとよかったのでは。先導したダムに沈む(シズム)話~「ドレ・シズム」「ミ・シズム」「ファ・シズム」の言葉遊びが隠れていて興味を引いたが、今ひとつ回収しきれなかった感じか。一部観客参加の部分もあったがこれについては蛇足と思った。が、音響・照明を含め舞台の見ごたえは十分。いろいろな成果を秘めた公演と思った次第。
